自然検索からの流入が伸びないとき、「ゼロクリック検索やAI検索の影響ではないか」と考えるBtoB企業のマーケティング担当者は少なくありません。結論を先に言うと、公開されている調査データは全体の傾向をつかむのに役立ちます。ただし、自社サイトで何が起きているかは、自社のデータで確かめる必要があります。調査の数値は測定方法や対象によって大きく変わるため、ひとつの数字だけで判断しないことが大切です。
ゼロクリック検索とは、検索結果ページや生成AIの回答の中でユーザーが必要な情報を得てしまい、どのWebサイトにもアクセスせずに検索を終える行動を指します。
ゼロクリック検索は、検索エンジンが検索結果ページで答えを直接表示するようになったことで広まった言葉です。ユーザーは知りたいことが画面上で分かれば、わざわざリンクをクリックしません。その結果、表示回数が多くてもWebサイトへのアクセスにつながらない検索が増えます。
AI検索が広がったことで、ゼロクリックが起きる経路は2つあると考えられます。ひとつは、検索エンジンの中で完結する経路です。AI Overviewなどの要約を読んで、ユーザーが検索を終えるケースがこれにあたります。もうひとつは、生成AIサービスの中で完結する経路です。ユーザーが検索エンジンを使わずにチャット型のAIに質問し、その回答で用が済むケースです。後者は検索エンジンのデータには表れにくいため、影響の全体像がつかみにくいという特徴があります。
ゼロクリック検索やAI検索に関する調査は、国内外の調査会社やメディア、公的機関から出ています。数値を見るときは、その調査が何を測っているのかによって、次の4つに分けて考えると整理しやすくなります。
この4区分で並べると、次の3つのことが分かります。まず、ゼロクリック率とAI利用率は、同じ「AIの影響」を語っていても、測っている対象がまったく違います。次に、ゼロクリック率は検索行動の結果を、利用率は人の経験や意識を測っています。そのため、一方の数値からもう一方を推し量ることはできません。最後に、生成AI経由の流入は、自然検索の流入と比べて規模も計測方法もまだ固まっていない分野です。引用されている数字を見かけたら、まずどの区分の数字なのかを確かめることが、正しく読むための第一歩になります。
同じ「ゼロクリック率」や「生成AIの利用率」でも、調査によって数値に大きな開きが出ることがあります。どれかが間違っているとは限りません。多くの場合、次の4つの違いで説明できます。
記事や資料で数値を引用するときは、「誰が・いつ・何を対象に・どのように測ったか」を必ずセットで確認し、書き添えることをおすすめします。数値だけが一人歩きすると、社内の議論も誤った前提で進みがちです。
公開されている調査の多くは、米国の検索データや一般消費者を対象にしています。これを日本のBtoBサイトにそのまま当てはめるには、いくつか注意が必要です。
米国と日本では、検索エンジンのシェアやAI機能が提供された時期、ユーザーの検索習慣が異なります。米国の傾向は先行指標として参考になりますが、日本でも同じ時期に同じ規模で起きるとは限りません。
消費者向けの調査には、天気やニュース、店舗情報など、その場で答えが分かる検索が多く含まれます。こうした検索は、もともとゼロクリックになりやすい性質を持っています。法人向けのサイトが対象とする検索とは中身が違うため、数値をそのまま自社の前提にするのは避けたほうがよいでしょう。
BtoBの検索は、大きく次の3つに分けられます。社名やサービス名で探す「指名検索」、製品やサービスを比べる「比較検索」、仕様や導入条件を調べる「仕様確認の検索」です。あくまで推測ですが、比較や仕様確認のように詳しい情報が必要な検索は、要約だけでは用が済みにくく、クリックが残りやすいと考えられます。反対に、用語の意味を調べるような検索は、ゼロクリックの影響を受けやすい可能性があります。どちらが当てはまるかは、自社のデータで確かめる必要があります。
流入が減った理由を考えるときは、次の5項目を上から順に確認します。はじめに「表示されているのにクリックされていない」のか、「そもそも表示が減っている」のかを切り分けることで、ゼロクリックの影響とそれ以外の原因を分けて考えられます。
この順番で確認するのは、原因の候補を広いものから狭いものへと絞り込むためです。はじめの3項目で検索結果ページ上で起きていることを把握し、残りの2項目でサイトに来たあとの動きと、検索以外の経路を確かめます。
ゼロクリック検索は、検索結果ページや生成AIの回答だけで検索が終わる行動です。調査の数値は、測定方法・定義・対象・時期によって大きく変わります。公開データは全体の傾向をつかむために使い、自社サイトへの影響はSearch ConsoleやGA4で確かめるのが現実的です。まずは表示回数とクリック数の推移から、自社の状況を確認してみてください。
自社サイトのSEOやAI検索への対応状況を、短い時間で整理したい方には、HVLの無料マーケティング診断をご用意しています。
現在のSEO・AI検索の状況を18問で確認する(無料・3〜5分)
調査によって大きく異なります。実際の行動ログをもとにした調査と、アンケートによる調査では、結果にかなりの差が出ることがあります。これは、実際の行動を記録するか、本人の認識を尋ねるかという測定方法の違いによるものです。数値を見るときは、調査の方法と対象をあわせて確認してください。
ゼロクリック検索は、クリックせずに検索が終わるという「行動」を指します。AI Overviewは、検索結果にAIの要約を表示する「機能」です。AI Overviewはゼロクリックを起こす要因のひとつですが、強調スニペットやナレッジパネルなど、ほかの表示形式でもゼロクリックは起こります。
公的機関や調査会社がそれぞれ利用率を公表しています。ただし、「利用したことがあるか」を尋ねる調査と「検索の代わりに使っているか」を尋ねる調査では、数値の意味が違います。どちらの質問なのかを確かめてから参考にしてください。
影響を受けやすいクエリでは、流入が減る可能性があります。一方で、比較や仕様確認のように詳しい情報が必要な検索では、影響が小さいことも考えられます。Search Consoleで表示回数とクリック数の推移を確認し、自社にどの程度の影響が出ているかを見極めることが大切です。
生成AIサービスからの流入の一部は、GA4の参照元として確認できます。ただし、すべての流入が正しく記録されるとは限りません。正確に把握したい場合は、あらかじめ計測の設定が必要です。
本記事はHVL編集部が作成しました。HVLでは、AIを活用して作成したコラムも自動公開しない運用とし、編集部の確認を経て掲載しています。