情報セキュリティ10大脅威 2026の組織編は、1位がランサム攻撃による被害、2位がサプライチェーンや委託先を狙った攻撃、3位がAIの利用をめぐるサイバーリスクです。3位は今回が初選出です。2026年10月30日時点で最新の10大脅威は2026年版(2026年1月29日公開、最終更新2026年5月21日)で、IPA(独立行政法人情報処理推進機構)が公開しています。
順位を知るだけでは対策は進みません。この記事では、情報システムの専任担当者がいない中小企業の経営者・総務・情報システム担当者に向けて、10大脅威 2026を今期やる対策の優先順位に置き換えます。被害の実態は、警察庁が2026年9月に公表した令和8年上半期の資料で確かめます。
中小企業が今期まず手を付けるのは、VPN機器等の更新とバックアップ、委託先との役割分担、生成AIの利用ルールだとHVLは考えています。
情報セキュリティ10大脅威は、IPAが前年の事故や攻撃の状況をもとに公開している脅威の一覧です。
「情報セキュリティ10大脅威 2026」は、2025年に発生した社会的に影響が大きかった情報セキュリティの事故や攻撃の状況などから、IPAが脅威候補を選定し、決定したものです。決定にあたっては、情報セキュリティ分野の研究者、企業の実務担当者など約250名のメンバーからなる「10大脅威選考会」が審議・投票を行っています。
「組織」向けの脅威には順位が付いています。「個人」向けは脅威名のみを五十音順で載せており、順位はありません。企業の対策を考えるときに中心となるのは組織編です。
読むときに注意したいのは、順位が低い脅威を後回しにしてよいという意味ではない点です。IPAは、複数の脅威にまたがる事案もあるため、各自の環境に照らし選出された脅威については、極力もれなく対策を行うことが求められるとしています。
HVLは、順位をそのまま自社の作業順にするのではなく、自社の環境に当てはめて着手の順番を決めることが大切だと考えています。たとえば、社外から社内に入る仕組みがある会社と、業務システムをすべて外部に任せている会社では、最初に確かめる相手も項目も変わります。
組織編の10項目は次のとおりで、順位・脅威名・初選出年・連続回数はIPAの記載のままです。
| 順位 | 脅威(組織編) | 初めて選ばれた年 | 選出の状況 |
|---|---|---|---|
| 1 | ランサム攻撃による被害 | 2016年 | 11年連続11回目 |
| 2 | サプライチェーンや委託先を狙った攻撃 | 2019年 | 8年連続8回目 |
| 3 | AIの利用をめぐるサイバーリスク | 2026年 | 初選出 |
| 4 | システムの脆弱性を悪用した攻撃 | 2016年 | 6年連続9回目 |
| 5 | 機密情報を狙った標的型攻撃 | 2016年 | 11年連続11回目 |
| 6 | 地政学的リスクに起因するサイバー攻撃(情報戦を含む) | 2025年 | 2年連続2回目 |
| 7 | 内部不正による情報漏えい等 | 2016年 | 11年連続11回目 |
| 8 | リモートワーク等の環境や仕組みを狙った攻撃 | 2021年 | 6年連続6回目 |
| 9 | DDoS攻撃(分散型サービス妨害攻撃) | 2016年 | 2年連続7回目 |
| 10 | ビジネスメール詐欺 | 2018年 | 9年連続9回目 |
出典:IPA(独立行政法人情報処理推進機構)「情報セキュリティ10大脅威 2026」を基に作成。表の中身は原文のままで、列名のみ変更しています。「初めて選ばれた年」と「選出の状況」は、2016年以降の10大脅威での取り扱いです。
この表は、順位だけでなく選出の状況と合わせて読むと、脅威の性質が見えてきます。
詳しく読みたい場合は、IPAの公開資料が使えます。解説書[組織編]は64ページで、2026年3月12日に公開されました。2026年4月10日には、8位の表「ランサムウェアの感染経路の割合」のデータが令和7年通年に差し替えられています。2026年5月21日には、個人編ハンドブックと対策マッピングシートが公開されました。
警察庁の資料からは、ランサムウェアの被害が中小企業にも及び、侵入経路の中心がVPN機器であることが分かります。
ランサムウェアとは、端末等に保存されているデータを暗号化して使用できない状態にした上で、復号の対価を要求する不正プログラムです(警察庁「ランサムウェア被害防止対策」)。
次の数値は、いずれも警察庁『令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(令和8年9月)の記載です。
HVLは、この数値から次の3つを読み取っています。
警察庁は、ランサムウェア等の未然防止と被害拡大防止のため、次の対策を周知・啓発しています。特に被害が増加傾向にある中小企業が主な対象です。
侵入経路の割合は、被害に遭った組織へのアンケートの結果です。調査の対象や期間が違う資料では、侵入経路の割合が異なる数字で示されることがあります。社内資料や提案書で数値を引用するときは、調査の名前と時点を一緒に書くことをHVLは勧めます。
上位3つの対策は、1位が入口・バックアップ・初動、2位が委託先との役割分担、3位が社内の利用ルールに置き換えられるとHVLは考えています。
1位の対策は、侵入の入口を減らし、被害が起きても業務を戻せるように備えることです。具体的な内容は、警察庁のランサムウェア被害防止対策に沿って次のように整理できます。VPNとは、社外から社内のネットワークに安全に接続するための仕組みです。
電源を落とさないという点は、とっさの場面では迷いやすい項目です。HVLは、初動の手順を紙やチャットの固定メッセージなどで事前に共有しておくことを勧めます。
2位の対策は、自社と委託先のどちらが何を担当するかを明確にすることです。サプライチェーンとは、製品やサービスが取引先や委託先を通じて届くまでのつながりを指します。
SCS評価制度は、サプライチェーン強化に向けたセキュリティ対策評価制度の略称です。2026年10月28日時点のIPAの公開情報では、★3・★4は2027年3月の受付開始に向けて整備中です。準備の進め方は、SCS評価制度の★3・★4の違いと中小企業の準備手順で整理しています。
3位の対策は、生成AIの利用を社員任せにせず、使い方を社内で決めることです。全社的な考え方は、AIをめぐる攻撃・防御と社内AIの守り方も参考になります。
入力・出力・運用に分けたルールの作り方は、生成AIの情報漏洩対策と社内ルールの進め方で解説しています。
HVLの見解:HVLは、上位3つのうち2位と3位は、自社のパソコンだけを守っても防げないと考えています。委託先や利用するサービスとの間で、誰が何をするかを決めることが対策の中心になります。システム開発・保守を受託する立場から見ても、この線引きは発注側と受託側の両方で確かめておきたい項目です。
4位以下では、4位・7位・8位・10位が、担当者や手順を決めるだけで着手しやすく、見落としやすい項目だとHVLは考えています。
残る5位・6位・9位も、対策が不要という意味ではありません。HVLは、まず次の確認から始めることを提案します。
今期は、今月中に現状の把握と手順の決定を進め、3か月以内に委託先との確認、半年以内に訓練まで進めることをHVLは目安と考えています。
| 時期 | やること | 関係する脅威 |
|---|---|---|
| 今月 | VPN機器・公開している機器とソフトウェアの一覧を作り、更新状況を確認する。バックアップの復元を一度試す | 1位・4位・8位 |
| 今月 | 振込先変更の確認手順を決める。生成AIに入力してよい情報を決める | 3位・10位 |
| 3か月以内 | 委託先に発行しているアカウントと、更新・バックアップの担当を契約で確認する | 2位・4位 |
| 3か月以内 | IPAの5分でできる!情報セキュリティ自社診断に答え、基本方針を定める | 全般 |
| 半年以内 | 感染を想定した初動の手順と連絡先(警察・委託先・取引先)をまとめ、訓練する | 1位・2位 |
この表の時期はHVLの目安で、IPAや警察庁が定めたものではありません。
着手の順番は、次のチェックリストで現状を確かめ、判断基準の表に当てはめると決めやすくなります。
| 自社の状況 | 先に進める対策 | 関係する脅威 |
|---|---|---|
| 社外から社内に入る仕組みがある | 機器の一覧、更新状況の確認、認証の見直し | 1位・8位 |
| 業務システムやWebサイトを外部に任せている | アカウント、更新の担当、事故時の連絡の確認 | 2位・4位 |
| 取引先からセキュリティ対策を聞かれている | 自社の対策の説明資料の整理、SCS評価制度の状況の確認 | 2位 |
| 生成AIを業務で使っている、または使う予定がある | 利用するAIと入力してよい情報の決定、出力の確認手順の整備 | 3位 |
| メールで振込先の連絡を受けることがある | メール以外の手段で確かめる手順の決定 | 10位 |
| どれに当てはまるか判断できない | IPAの5分でできる!情報セキュリティ自社診断への回答 | 全般 |
この表はHVLの考え方を示す目安です。複数に当てはまる場合は、社外とつながる機器の確認を先に進めることをHVLは勧めます。警察庁の資料でVPN機器が侵入経路の約5割を占めているためです(令和8年上半期、被害組織へのアンケート結果)。
対策が止まりやすいのは、技術の難しさよりも、担当や手順が決まっていない箇所だとHVLは考えています。
10大脅威への対策の多くは、IPAの情報セキュリティ6か条の徹底から始まります。
IPAの「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」第4.0版(2026年3月27日公開)の情報セキュリティ6か条は、次の6つです。
ガイドラインのコラムでも、参考として情報セキュリティ10大脅威「組織編」の共通対策が紹介されています。この記事の優先順位表と6か条を並べると、機器の更新、パスワード、バックアップといった項目が重なります。6か条を社内の共通言語にして、そこに委託先との役割分担と生成AIの利用ルールを加える形が進めやすいとHVLは考えています。6か条の進め方は、IPA第4.0版の6か条と中小企業の進め方で詳しく解説しています。
組織編の1位はランサム攻撃による被害で、11年連続11回目の選出です(2026年1月29日公開)。
組織編3位の「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初選出です。
HVLは、1位のランサム攻撃への備え(VPN機器等の更新、バックアップ、初動)と、2位の委託先との役割分担の確認から始めることを勧めます。
警察庁『令和8年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について』(令和8年9月)では、令和8年上半期の被害報告件数は123件で、半期の件数として最多です。被害企業の約6割が中小企業です。
対策しなくてよいという意味ではありません。IPAは、選出された脅威については極力もれなく対策を行うことが求められるとしています。
情報セキュリティ10大脅威 2026は、ランサム攻撃、委託先を狙った攻撃、AIの利用をめぐるリスクが上位です。警察庁の令和8年上半期の資料でも、ランサムウェアの被害報告は123件と半期で最多で、被害企業の約6割が中小企業でした。中小企業は、VPN機器等の更新とバックアップ、委託先との役割分担、生成AIの利用ルールから順に手を付けることが、HVLの考える今期の優先順位です。
自社の業務システムやWebサイトの開発・保守の体制、委託先との役割分担を見直したい場合は、HVLのシステム開発・保守(システムインテグレーション)にご相談ください。開発・保守の進め方をまとめた資料の請求や、お問い合わせも受け付けています。