社内のPCやサーバーを守るセキュリティソフトは、どの製品もランサムウェア対策や導入のしやすさを掲げているため、カタログを見比べるだけでは違いがつかみにくいものです。中小企業で差が出やすいのは、防御機能の名前よりも、アラートが出たときに誰が確認して対応するのか、既存の契約とどう組み合わせるのか、料金をどの単位で払うのかといった運用面です。
本記事では、法人向けセキュリティソフトを比較するための軸を整理したうえで、中小企業の検討で候補になりやすい製品の公開情報を同じ観点で並べます。特定の製品を推奨するものではありません。専任の情報システム担当者がいない会社でも、自社の体制に合う候補を絞り込めるように構成しています。
2026年10月時点で各社の公式サイトに掲載されている情報をもとにしています。最新の料金・仕様は各社公式サイトでご確認ください。
セキュリティ対策全体の優先順位から整理したい場合は、先に中小企業のセキュリティ対策の始め方を確認しておくと、端末対策の位置づけが明確になります。
比較表を見る前に、製品タイプの違いを押さえておきましょう。タイプを決めずに機能の数だけを比べると、社内で使いこなせない製品を選んでしまうことがあります。製品タイプを確認したあとで、運用体制、EDR、MDR・SOC、対応OS、管理画面、価格体系、Microsoft 365との関係という観点で候補を絞ります。
法人向けのエンドポイント対策は、大きく次のタイプに分けて考えると整理しやすくなります。違いは「どこまで製品が自動で止めるか」と「検知後の対応を誰が担うか」にあります。
| 製品タイプ | 主な役割 | 社内に必要な体制 | 検討しやすい状況 |
|---|---|---|---|
| ウイルス対策(EPP)中心 | マルウェアの侵入や実行を防ぐ | 通知の確認と端末管理ができる担当者 | まず全端末の基本的な保護をそろえたい |
| EPPとEDRの一体型 | 防御に加え、侵入後の検知、調査、隔離を行う | アラートを読み解き、判断できる担当者や外部の支援先 | 侵入された場合の影響範囲まで把握したい |
| 監視・対応サービス(MDR)付き | 製品の運用に加え、外部の専門家が監視と対応を担う | 連絡を受けて社内判断を下す窓口 | 社内に監視や調査の担当者を置けない |
上の表のとおり、タイプが上がるほど守れる範囲は広がりますが、費用や社内調整の負担も変わります。社内で対応できる範囲を超えるタイプを選ぶと、通知が放置されて効果が出にくくなるため、機能よりも先に体制から考えることをおすすめします。
EPP(Endpoint Protection Platform)は、マルウェアを端末で動かさないように防ぐ「入口の防御」です。一方、EDR(Endpoint Detection and Response)は、端末の動作を記録し、不審な動きを検知したあとに、原因の調査や端末の隔離を支援する仕組みです。
攻撃手法は変化し続けるため、侵入を完全に防ぐことを前提にせず、侵入後に早く気づいて被害を広げないという考え方が広がっています。ただしEDRは入れるだけでは機能しません。検知内容を確認して判断する人がいるかどうかで、導入の効果が大きく変わります。
UTMは、社内ネットワークとインターネットの境界に置いて通信を監視する機器やサービスです。一方、エンドポイント対策はPCやサーバーそのものを守ります。社外に持ち出したPCや在宅勤務の端末は、社内のUTMを通らないことがあるため、どちらかがあればもう一方が不要になるわけではありません。
境界の機器については、VPN機器の更新や保守契約も含めて見直す必要があります。詳しくは中小企業のランサムウェア対策の優先順位で整理しています。
最初に確認したいのは、アラートを誰が見て、夜間や休日はどうするのかです。専任の情報システム担当者がいない会社では、通常業務との兼任でも回せるか、設定の大半を標準のままで使えるか、外部の支援先に任せられるかを重視します。担当者の不在時に代わりに判断する人を決められない場合は、製品だけで完結させようとせず、販売店や支援サービスの範囲も比較に入れましょう。
同じシリーズでも、プランによってEDRの有無が異なる場合があります。カタログに「高度な保護」とあっても、検知後の調査画面や端末の隔離操作まで含まれるかは別の話です。見積もりを取る際は、プラン名ではなく「検知後に何ができるか」を質問すると比較しやすくなります。
MDRやSOCは、外部の専門家が監視と初動対応を担うサービスです。確認したいのは、対応時間帯、隔離などの操作をどこまで代行するか、連絡手段が日本語に対応しているかです。監視の通知を受けたあとの社内判断は残るため、連絡を受ける窓口と判断者は決めておく必要があります。
社内のWindows PCだけでなく、Mac、Linuxサーバー、スマートフォン、タブレット、古いOSが残る機器まで洗い出します。サーバーが別ライセンスになる製品もあるため、端末の種類ごとに台数を分けて見積もりを依頼すると、後からの追加費用を防げます。
クラウド管理なら管理サーバーの用意や保守が不要で、拠点外の端末の状況も確認しやすくなります。一方、社内ネットワークの制約からオンプレミス管理が必要な会社もあります。管理画面やサポート窓口が日本語で使えるか、通知メールの内容を担当者が理解できるかは、試用時に実際に確認しましょう。
価格はユーザー単位と端末単位で試算結果が変わります。兼務で複数の端末を使う社員が多い会社はユーザー単位、共用PCが多い会社は端末単位のほうが、それぞれ把握しやすい傾向があります。あわせて、月払いか年払いか、台数の区分で単価が変わるか、導入支援が別料金か、税抜き表示かを確認します。問い合わせが必要な製品は、同じ台数と条件で見積もりを依頼すると比較がしやすくなります。
Microsoft 365を利用している会社は、現在の契約プランに端末保護が含まれていないか、追加できないかを先に確認します。すでに含まれているプランを契約したまま別製品も購入すると、費用が重複することがあります。逆に、メールやIDの管理と別の製品で端末を守る構成を選ぶ場合は、管理画面が分かれる負担も考慮します。
ここでは各製品について、公式ページで確認できた範囲を同じ観点で並べます。公式ページに記載がない項目は埋めていないため、記載がない点は問い合わせで確認してください。
| 製品 | 対応OS・デバイスの記載 | 料金の掲載内容 | EDR・運用支援の記載 |
|---|---|---|---|
| ESET PROTECT | Essential クラウドの記載はWindows/Mac/Linux/Android、サーバーはWindows/Linux | Entryは1ライセンスあたり年額で、ライセンス数6-10の区分が5,950円(税抜き) | ラインアップにESET PROTECT MDRの名称あり |
| カスペルスキー スモール オフィス セキュリティ | Windows、macOS、Android、iOS | 金額の記載なし。問い合わせ窓口と販売パートナーを案内 | 別製品のKaspersky Next EDR Foundationsを案内 |
| AppGuard Workstation | Windows PC向け(旧AppGuard Enterpriseの2020年4月時点の記載) | 価格表示はオープン価格 | 導入から運用までのバンドル商品(最大99台) |
| ウイルスバスター ビジネスセキュリティサービス | Windows、Mac、モバイルデバイス、Google Chromebook | 新規導入や見積もりは電話窓口への問い合わせを案内 | 同じファミリーにWorry-Free XDRとWorry-Free Managed XDR |
| Microsoft Defender for Business | Windows、macOS、iOS、Android | Business Premiumは¥3,298 ユーザー/月相当、年払い(消費税別) | EDRを含む(最適化版の記載) |
| CrowdStrike Falcon Go | モバイルはAndroidおよびiOS(PC向けOSは参照ページに記載なし) | デバイスあたり月額請求$7.99または年間価格$59.99(米ドル) | EDRの説明文はFalcon Enterpriseの欄に掲載 |
料金の列を見ると、金額を公開している製品と、問い合わせや販売店を案内している製品に分かれます。金額の比較だけで判断せず、EDRや運用支援が同じ範囲かどうかをそろえて確認してください。以下で製品ごとの内容を見ていきます。
製品名から入るよりも、自社の状況に近い行を確認し、確認すべき点を決めてから候補を見るほうが、比較の手戻りが少なくなります。
| 会社の状況 | 検討しやすいタイプ | 優先して確認すること |
|---|---|---|
| 専任の担当者がおらず、PC台数も少ない | EPP中心、または外部支援付き | 標準設定のまま運用できるか、問い合わせ先が日本語か |
| 兼任の担当者が管理している | EPP中心から、クラウド管理のEPPとEDRの一体型 | 通知の量、管理画面の見やすさ、担当者不在時の代替 |
| 情報システム担当者がいて、調査もできる | EPPとEDRの一体型 | 調査や隔離の操作性、ログの保存期間、既存システムとの相性 |
| 機密情報が多いが、監視要員は置けない | MDR付き | 対応時間帯、代行できる操作の範囲、社内の連絡体制 |
| Microsoft 365を全社で利用している | 契約プランに応じて判断 | 現在のプランの範囲、追加費用、管理の一元化の効果 |
| 古いOSや止められない機器がある | 対象機器に対応する製品を個別に確認 | 対応OSの範囲、導入時の動作検証、機器メーカーの条件 |
判断に迷う場合は、「検知後の対応を誰が担うか」を基準にしてください。社内で担えないならEDRの機能数よりも外部の支援範囲を、社内で担えるなら調査のしやすさを優先すると、候補を絞りやすくなります。
導入や入れ替えは、次の順番で進めると、後からの漏れや業務への影響を抑えられます。
契約プランによって異なります。Microsoft 365 Business Premium には Defender for Business が含まれます。Microsoft 365 Business Basic や Business Standard などの組織では、Defender for Business をスタンドアロンで利用できるとされています。まず自社の契約プランを確認し、管理者が設定や通知の確認まで行えるかを確かめてください。
使える機能はOSや契約によって異なるため、一律には言えません。会社で使う場合は、全端末の状態を一か所で把握できるか、未更新の端末に気づけるか、問題が起きたときに誰がどう対応できるかで判断します。端末が増えて個別の確認が難しくなってきたら、法人向けの管理機能がある製品を検討する目安になります。
個人向け製品は、利用規約で商用利用が認められているかを確認する必要があります。また、法人向けのような一元管理の機能がないと、更新切れや未導入の端末を把握しにくくなります。社用端末が複数ある場合は、規約と管理のしやすさの両面から法人向けを検討するのが現実的です。
扱う情報や取引先の要件、社内の体制によって判断が分かれます。ランサムウェアなどの被害が事業継続に直結する会社では検討する価値がありますが、確認する人がいないまま導入しても効果は限られます。社内で担えない場合は、MDRなど外部の支援を組み合わせる形や、まずEPPの全端末導入と更新管理を徹底する形から検討するとよいでしょう。
製品や販売店によって扱いが異なります。ESET PROTECT ソリューションの対象製品へ乗り換える場合は、利用中の他社製ウイルス対策ソフトの残りの期間の一部を契約期間に追加適用する残期間保証サービスが案内されています。乗り換えを検討するときは、更新日より早めに試用と見積もりを始め、移行期間の費用を確認してください。
法人向けセキュリティソフトの比較では、機能の多さよりも、検知後の対応を誰が担うかを先に決めることが重要です。そのうえで、対応OS、管理画面、価格の単位、Microsoft 365などの既存契約との関係を確認すると、候補を自然に絞り込めます。金額を公開していない製品もあるため、台数やOSの内訳をそろえて見積もりを取り、少数の端末で試用してから判断してください。
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